中国主要樹種の概説

中国樹木志 全3巻 中国林業出版社 1巻(拙翻訳)

 

我が国の樹種資源は極めて豊富である、すでに発見されている3万種の種子植物のうち、木本植物は、約8,000余種、そのうち高木が約2,000余種、灌木が約6,000余種となっている。高木樹種のなかで、優良用材と特用経済樹種は、約1,000種に達する。なお、外国種で、導入に成功した優良樹種が、約100種ある。これらは、社会主義建設のため、建築、造船、家具、坑木、電柱、紙とその他用材に大量に使われる。さらに、松脂、カッチ(タンニンエキス)、芳香油、油、生漆、コルク、生ゴム等多種の副産品を提供している。

これら豊富な樹木資源は、我が国林業生産に有利な条件を提供している。

 

我が国は、果てしなく広く、地勢は起伏があり、北から南へかけて、寒温帯、温帯、暖温帯、亜熱帯と熱帯を包括し、東から西に海洋性湿潤森林地帯、大陸性乾燥半砂漠と砂漠地帯がある。これらの両者の間に、半湿潤と半乾燥の森林草原と草原移行地帯がある。地勢は、西北が高く、東南が低い。東部地区は、平原と丘陵が大部分を為し、西部は、高原、山地と盆地となっている。南北は、緯度約49度にまたがり、東西は、経度約63度に及ぶ。海洋からの遠近は、同じではなく、更に高原と大山とその異なる走向の影響もあり、これによって、各地の冷熱、乾湿の差異は著しい。特にこれは、山地の垂直の高さの差が気候および土壌の変化を引き起こすためであり、我が国の自然条件は特に恵まれた多様性を形成し、そのために、各種の生態系が要求する樹種や、異なる歴史的、地理的背景のある外来樹種も皆それぞれの所を得ることができて成長、繁殖し、育っている。

我が国の樹木の種類と森林の類型は、豊富、多彩であり、早くから世界の植物学者の注目する所である。例えば、我が国の東北北部、新疆北部には、寒帯  から伸びてきた針葉樹林があり、樹種が多く、シベリア区系の構成要素となっている。海南、雲南南部等は熱帯雨林、季雨林があり、典型的な熱帯科の属する樹種がある。リュウノウコウ科、ニクズク科、バンレイシ科、ヤマラン科?など熱帯系構成要素中の東南の亜熱帯と熱帯の構成樹種が多くある;内蒙古、新疆の南部、中部、西部、甘粛西部、青海等西北の旱魃地区には、西アジアから中央アジア区系の構成要素、例えば、天山雲杉(Picea schrenkiana var. tienshanica)、胡楊(Populus euphrantica)、灰楊(Populus pruinosa)、梭梭属(Haloxylon)、駱駝刺属(Alhagi)、塩豆木属(Halimodendron)、水柏枝属(Myricaria)等である。西南地区の樹種は多くが、インド、マレーシア区系の構成要素に密接に関係し、西蔵高原の西蔵紅杉(Larix griffithiana)、喬松(Pinus griffithii)、ヒマラヤ柏木(Cupressus torulosa)、雲南チベット柏(Sabina wallichiana)、ヒマラヤ冷杉(Abies spectabilis)、長葉雲杉(Picea smithiana)、ヒマラヤ紅杉(Larix himalaica)などすべてヒマラヤ地区の特有種である。

新生代第4紀氷期にあっては、我が国の華東、華中、西南の広大な亜熱帯地区の局部山地に氷河が僅かに発生したが、多くの地方は未だ氷河の直接の影響を受けず、若干の“樹種の避難所”を形成した。例えば、湖北西部利川の海抜900−1,500mの山区に世界的に著名な“生きている化石”水杉(Metasequoia glyptostroboides)が、保存されている。そして、これに類した樹種は、中生代白亜紀および新生代第3紀に成長が盛んになり、北半球に広く分布し、北は北極圏、欧州、アジア北部および北アメリカまで広く分布した。しかし、後に第4紀の氷河の厳寒の襲撃を受けて絶滅し、我が国の湖北利川および湖南西部桑植一帯に僅かに水杉1種が残っているだけになった。

このほか、我が国の南方地区に、保存された特有の遺跡樹種が尚ある:

銀杏(Ginkgo biloba)、麻クヌギ{クヌギ}(Quercus acutissima)、栓皮クヌギ、{アベマキ}(Q. variabilis)、金銭松(Pseudolarix kaempferi)、楓香{フウ}(Liquidambar formosana)、台湾杉(Taiwania cryptomerioides)、銀杉(Cathaya argyrophylla)、山茶花{ツバキ}(Camelia japonica)、杜仲(Eucommia ulmoides)、南酸棗(Choerospondias axillaris)等。

アメリカ北部は、山脈が南北方向に走っているため、氷河が降りてきた時に温暖を好む樹種は南北方向に遷移した。これにより若干の樹種が保存された。したがって、我が国の東部と北アメリカは共通の東アジア―北アメリカ区系の構成要素を形成した。例えば、山核桃属{ペカン属}(Carya)、檫木属(Sassafras)、鴾掌楸属{ユリノキ属}(Liriodendron)、金楼梅属{マンサク属}(Hamamelis)、夏蜡梅(Calycanthus chinensis)、銀鐘花属(Halesia)、肥皁莢属(Gymnocladus)等。

今、我が国の自然区域を考察し、簡素に各区の自然条件、主要樹種の資源の分布、利用と、主要な森林類型とを紹介し、更に林業経営の方向と増産の道筋、およびそれによって各地区科学地に林業発展の企画をするための根拠を提供したい。

以下略


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